アライグマ

住まいや作物などに被害をもたらす害獣は無数にいます。アライグマもそのひとつ。害獣被害を防ぐためには、まず害獣それぞれの生態を学び、そこから対策・駆除していくことが大切です。ここでは、アライグマの生態及び、その対策や駆除方法を見ていきましょう。

生態・出没時期

アライグマは、非常に高い繁殖力を持つ動物です。1歳で60％が繁殖し、2歳以上になるとほぼ100％の個体が繁殖します。さらに1回の出産で3～5頭が生まれるため、駆除しないとどんどん増えてしまうのです。

出没時期は主に1～3月の年のはじめ。この時期はアライグマの繁殖期であり、生まれたアライグマは10ヶ月前後という短い期間で成熟するのです。

対策・駆除方法

アライグマの苦手なニオイを利用する

代表的なアライグマ対策は、アライグマが苦手なニオイを持つ燻煙剤や忌避剤を用いることです。アライグマは、ハッカ油や木酢液、ハーブや唐辛子といった強い刺激臭を苦手とします。これらをアライグマが出没しやすい場所に散布することで追い出したり、寄り付きにくくしたりできます。

ただし、すでに餌場になっていたり、子育てをしている状態では、ニオイだけでは追い出すことが難しいでしょう。

エサとなりえるものを撤去する

アライグマは餌となるものがある場所に繰り返し出没するため、餌になるものがあれば取り除きましょう。アライグマは雑食なので、果物、野菜、ペットフード、生ゴミなどさまざまなものを餌にします。特に屋外に生ゴミを出しておくと狙われやすいので、屋外にゴミを捨てないようにしましょう。

侵入経路をふさぐ

アライグマの侵入経路は、ベランダや通気口などさまざまで、屋外菜園なども対策しておかなければ侵入されてしまいます。侵入経路を塞ぐには、ベランダなどへの足場になる高い木の枝を切る、屋内に通じている通気口や窓、亀裂や破損箇所は金網を設けたり、修復したりするといった対策が有効です。

このように、アライグマ対策は個人でも可能ですが、アライグマは特定外来生物かつ、鳥獣保護法の対象動物となっています。そのため、個人で駆除する際には自治体に許可を取る必要がありますが、個人で駆除すること自体も難しいでしょう。無理に個人で対策するよりは業者に依頼することをおすすめします。

被害

住宅が傷む

アライグマのもたらす代表的な被害が、住宅の損傷・汚損です。電気配線や配管をかじられたり、壁や床を引っかかれたりする住宅設備の破損にくわえ、糞尿による悪臭や建材の腐食も起こります。アライグマには「ため糞」という習性があり、1ヶ所にまとめて糞尿が溜まるので汚損の被害は重大です。

感染症などの健康被害

アライグマは、さまざまな感染症を媒介することでも知られています。アライグマによって媒介される有害な感染症や害虫としては、マダニ、喘息、アライグマ回虫、アライグマ糞線虫、狂犬病などがあります。

人やペットが襲われて怪我をする

可愛らしい外見から誤解されがちですが、アライグマは気性の荒い攻撃的な動物です。うっかり近づくと襲われて怪我をすることもあります。特に、発情期や子育て中のアライグマは凶暴なので、大怪我を負う危険もあるのです。怪我だけでなく、傷から感染症や寄生虫に感染するリスクもあります。

農作物や家庭ごみが荒らされる

アライグマは雑食性の動物なので、無防備な状態の生ゴミや農作物は格好の餌食となります。ネットや袋などで覆っていても、アライグマは5本の指で器用にこじ開けて食べてしまうので油断できません。ネットや袋で防護した屋外の農作物や生ゴミが荒らされている場合は、アライグマの仕業と見ていいでしょう。

アライグマに関するその他の基礎知識

アライグマがもたらす病気とは？

アライグマは様々な病原体を保有しており、人間に深刻な感染症を引き起こすリスクがあります。主な感染症にはサルモネラ菌食中毒、カンピロバクター食中毒、アライグマ回虫症、狂犬病、レプトスピラ症、エキノコックス症、SFTS（重症熱性血小板減少症候群）などがあります。これらの感染症は糞尿や接触によって伝染するため、アライグマに近づかないことが重要です。特にアライグマ回虫やエキノコックス症は致死的なリスクがあります。

アライグマを捕獲するための罠はある？

アライグマを罠で捕まえるためには、体長に合った適切な箱罠（折りたたみ型やワイヤーメッシュ型）を使用します。設置場所は通り道や出入り口など頻繁に出没する場所が効果的です。餌はアライグマの好物である甘い果物や魚、鶏肉などを使用し、定期的に餌の種類を変えることで興味を引き続けます。捕獲後はアライグマに直接触れないよう注意し、侵入経路を封鎖することで再発を防ぎます。

アライグマのフンの見分け方は？

アライグマのフンは直径2～3cm、長さ5～15cmで、細長い形状が特徴です。フンには動物の骨や昆虫の羽、種子が含まれ、色や形が食べ物によって変わります。病原体としてSFTSウイルス、狂犬病ウイルス、アライグマ回虫などが含まれる可能性があり、健康被害を引き起こします。また、溜めフンの習性により、住宅の床板や断熱材が腐食し、強い悪臭が発生することがあります。処理には防護装備が必須で、徹底した清掃と消毒が必要です。

アライグマはどんな鳴き声？

アライグマの鳴き声は「クルルル」と聞こえ、威嚇する際には「シャーシャー」や「ゴーゴー」という音になります。夜行性であるため、夜間にその鳴き声や足音が聞こえやすくなり、騒音被害を引き起こします。一時的な対策として、窓を閉めたり耳栓を使用することが効果的です。しかし、根本的な解決にはアライグマの駆除が必要です。アライグマの存在を放置すると、鳴き声以外にも食べ物を荒らす、糞尿による悪臭などの被害が拡大します。

アライグマに天敵はいる？

アライグマは日本には天敵がいないため、人間を恐れず農作物や家屋に被害をもたらします。追い出す方法としては、音、光、匂いが有効です。音ではオオカミの鳴き声や超音波装置、光では青色LEDライト、匂いではハッカ油や唐辛子、ニンニクなどが効果的です。また、ウルフピーの使用も推奨されますが強い悪臭があるため注意が必要です。これらを組み合わせて使用することで効果的な対策が可能です。

アライグマに遭遇したときの正しい対処法とは？

アライグマに遭遇した際は、近づかず3メートル以上距離を取り、静かに後退しましょう。追い払ったり、餌を与えたりするのは危険です。目撃した場合は自治体に通報し、屋根裏などに侵入された場合は専門業者に相談してください。予防策も重要です。

アライグマによる農作物被害を防ぐには？

アライグマは夜行性で雑食性の外来種として、果物や野菜などの農作物に深刻な被害をもたらしています。被害を防ぐには、餌場の排除や電気柵などによる侵入防止、適切な捕獲対策が必要です。法令を守ったうえで、必要に応じて専門業者の活用も検討しましょう。

アライグマによる家畜・ペット被害の実態と対策

アライグマは学習行動と夜行性、高い繁殖力で生息密度を増やし、鶏卵の採卵率低下や犬猫の咬傷など深刻な損害を引き起こします。食べ残しや生ゴミが餌場を提供し、被害を拡大する悪循環を断ち切るには、ゴミ管理が重要です。金網フェンスや電気柵の設置、屋内飼育・密閉容器での餌管理、市販忌避剤や超音波装置の併用が有効であり、監視カメラと定期点検で状況を把握し続けましょう。

アライグマの出没時期と年間行動サイクル

アライグマは春（3～5月）の繁殖・巣作り、夏（6～8月）の子グマ分散と被害ピーク、秋（9～11月）の蓄えとねぐら移動、冬（12～2月）の休眠と断続的採食を一年を通じて繰り返します。活動は夜行性ですが、気温や餌に応じて日中も採食し行動範囲を柔軟に広げます。各フェーズごとの防除ポイントも押さえられます。